今や一人一台の所持が当たり前になっているスマートフォン。メディアで『スマホ育児』という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。世間では、育児中にスマートフォンを使用することや、スマートフォンのアプリを使った育児、スマートフォンを子どもに見せることなどについて、さまざまな意見が飛び交っています。
今回は、スマートフォンの利用が子どもに与える影響について、関小児科医院の関 浩孝先生に『スマホと子育て』をテーマにお話しいただきました。
スマートフォンは生活必需品?
スマートフォン(以下スマホ)は生活するうえでなくてはならない便利なツールになっています。インターネット上には「スマホで子育て」なる動画や「子育て支援アプリ」もたくさんあり、利用されているお母さん方も多いと思います。この「さつませんだい子育てナビ」も大いに活用してください。子育てを応援してくれる様々な情報や機能が満載です。ただ子育て中のスマホ利用には子ども(特に乳幼児)の脳に対する安全性が証明されていないこともあり注意することも必要です。
スマホの利用状況
実際には、子育てにどのくらいスマホが使われているのでしょうか?2017年のベネッセの発表したデータによると、0歳児では44%、1歳児は64.6%、そして2歳児では80.4%と2013年の結果と比較して明らかに増加しています。利用場面としては、外出先での待ち時間、子どもが使いたがるときが約3割ずつ、子どもが騒ぐとき、自動車、電車などで移動するとき、親が家事などで手が離せないとき、子どもが約束を守ったご褒美としてが1割程度、以下、寝るまでの時間、食事中などもありました。利用時間は7割が15分以内である一方で、スマホとタブレットを足して計算すると2時間以上が8.8%、4時間以上が2.0%あり、人口でいうと合わせて52万人以上の長時間利用者がいることは気がかりです。
子どもの脳の発達
乳児の脳は生後1年で2倍の大きさになり、その頃には、見る(視覚)、聞く(聴覚)、触れる(触覚)、味わう(味覚)、においをかぐ(臭覚)といった五感の基礎ができあがります。それから3歳までの脳の神経細胞間で情報信号をやり取りする接合部が急激に増えて、脳の80%が完成することが分かっています。この細胞と細胞を結ぶ神経回路“シナプス”は五感からの刺激によって増え、脳のバランスのとれた発達を促します。この脳がいちばん発達する0歳から3歳までの生育環境が子どもの健全な発達に非常に重要になります。
愛着形成と母子相互反応
この3歳までの間に愛着(アタッチメント、情愛の絆)が母親(母性としての保護者)との間に形成されることが、子どもの精神的健康へつながる自尊感情を生み出すのみならず、将来にわたり肯定的人生を送る人格形成の基盤になると言われています。愛着形成で最も重要なことは触れ合い(愛情を込めて行うスキンシップ)育児です。赤ちゃんが泣けば、抱いてあやしたり、目を見て話しかけたり、おむつを替えたり、母乳を与えたり、いろいろとかまって応答してあげることが必要です。すると赤ちゃんからの笑顔や声だし反応が出て、お互いの双方向のやりとりが生まれ、赤ちゃんは子どもらしく、お母さんはお母さんらしく育っていきます。(母子相互反応)
愛着障害とスマホネグレクト
どうせスマホは使わせるのだから早く使わせたほうがいいと0~1歳からスマホを見せることは、無防備な子どもの脳に強い人工線や画像の刺激を与えることになり、目にもダメージがあることがわかっています。そしてお母さんがスマホの操作に夢中になりすぎることで、触れ合い育児の大切な時間と空間を奪ってしまい、愛着形成に障害をきたす可能性もあります。子どももスマホを止めさせようとすると機嫌が悪くなり、癇癪を起すようになれば依存症の状態です。そのためアメリカと日本の小児科医会は2歳までは画像を見せないように勧告しています。
乳幼児期にスマホを見せることはできるだけ避け、自然の中で遊び、様々な体験をするよう心がけましょう。その後は子どもの発達段階に応じて対応し、もし子どもにスマホを持たせるときはしっかりとした約束を取り交わしましょう。いずれにせよスマホは、利点と問題点を持った両刃の剣であることを理解し、今後も社会全体で子どもたちの成長発達が妨げられないように見守っていく必要があります。
先生のご紹介:関小児科医院 関 浩孝先生
医療法人九十九会 関小児科医院 院長
平成2年10月、関小児科医院を継承。
地域における小児初期救急医療の充実をライフワークとして子どもの診療に取り組む。医院に併設した子ども元気倶楽部「じゃんけんハウス」に、薩摩川内市の委託事業として病児保育所「ぐうちょきぱー」を開設。また、地域子育て支援センター「おいで!おいで!」も開設している。子育てと健康づくりを応援します。
薩摩川内市子育て世代包括支援センターなないろ相談室
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