みなさんはご自身のお口の中の健康について、日ごろから気をつけていらっしゃいますか?特に、乳歯が生えそろってきたお子さんのパパやママたちは、『わが子のお口の中の健康を守りたい!』と思いつつ、実際はどういった点に気をつけていけばいいのだろうと悩まれている方も多いのではないでしょうか。子どものお口の中の健康を守るためには、むし歯についての正しい知識を知ることが大切です。
そこで今回は、子どものむし歯予防について、しげたこども歯科の重田浩樹先生に『子どもの歯と口の健康について考える』をテーマにお話しいただきました。
~むし歯に関して~
はじめに
むし歯は地域格差があり、薩摩川内市はむし歯の多い地域です。最もむし歯になりやすい時期は、歯が生えてきた時ですので、子どもの病気だといえます。むし歯は不可逆性疾患で一度むし歯になると、二度と元の健康な歯には戻らないため、むし歯にならないように予防が重要になってきます。
今回は、子どもの歯科疾患で特に注意しておきたいむし歯について考えていきたいと思います。
むし歯菌はうつります
むし歯菌は生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中にはいません。主に養育者から子どもに移ります。しかし、その事だけを重く受け止め、「スプーンや箸を共有しない」「チューはしない」ように心がけているという方がたまに見受けられますが、あまりお勧めしません。それよりも大切なことは生活習慣を見直すことと、養育者のお口の中をきれいに保つことでむし歯菌も減り、子どもの感染の可能性も下がります。子どもとのスキンシップは大切ですので、愛情いっぱい触れ合ってください。
乳歯の大切さ
乳歯の生え始めは生後約7か月頃で、乳歯が抜けて全て永久歯に変わるのは約12歳頃です。つまり、子どもが最も成長発育する時期に、乳歯がお口の中で活躍しています。
まず、乳歯の役割として食べ物を噛むことがあげられます。食べ物をよく噛むということは、子どもの脳の発達と密接に関係しています。また食べ物をよく噛むことによってアゴの筋肉や骨の成長の促進、口腔機能の発達にも関係しています。
次に、乳歯の役割として一生涯使う永久歯を正しくきれいに導くことがあげられます。むし歯が原因で乳歯を抜いてしまうと周りの歯が寄ってきて永久歯の生えてくる隙間がなくなることがあります。さらに、ひどいむし歯の乳歯を放っておくと、根っこの先まで病変がおよび、その下にある永久歯の形成がじゃまされて、表面がもろい永久歯になってしまうこともあります。
むし歯はどうしてできるの?
むし歯のできる仕組みを理解するためには「脱灰(だっかい)」と「再石灰化(さいせっかいか)」の理解が必要です。
「脱灰」というのは歯の表面から歯の成分でもあるカルシウムやリンが溶け出していくことをいいます。歯の表面はエナメル質で覆われていて硬く、その表面をプラークが覆っています。この中にむし歯菌がいて、大量の酸を発生すると歯の表面からカルシウムやリンが溶け出していきます。
「再石灰化」とは歯の表面から溶け出していたカルシウムやリンが、唾液の作用により中和され、歯の表面に再び戻ることをいいます。口の中では食事のたびに脱灰、再石灰化が繰り返されているのです。この時にフッ化物から放出されるフッ素イオンがあると、効率よく再石灰化がおこり歯の表面の硬さが増強されます。
通常は「脱灰」と「再石灰化」のバランスは保たれています。しかし、バランスが崩れて脱灰が進むと、最初は歯が白く濁り、やがて穴があいてしまいます。これがむし歯です。飲食の回数が多かったり、歯みがきが行き届かなかったりすると脱灰の時間が長くなり、むし歯になるリスクが大きくなります。再石灰化を促すためには飲食の回数を減らし、お口を休ませる時間が必要です。(下図参照)
お子様が熱を出して水分補給をしないといけない場合や熱中症対策で飲み物を水筒に入れ、学校に持っていく機会が増えていますので、飲み物に関することをお伝えします。
酸性やアルカリ性を示すpHは、pH7が中性で、数値が低くなるに従い酸性が強くなります。歯が溶け出す数値を「臨界値」といい、永久歯はpH5.5~5.7、乳歯はpH5.9~6.3です。pHがそれ以下になるとエナメル質が溶け出すといわれています。
むし歯菌は糖分を分解して酸を産生し、むし歯になります。よって、糖分が多く含まれている飲食物はむし歯になりやすいといえます。また、pHが低い飲食物を常に飲んでいると歯の表面が脱灰し、むし歯のような症状を生じる場合がありますので、そのような飲食物を口にした後は、水やお茶で口をすすいだり、歯の石灰化を促進するフッ化物洗口やフッ化物配合歯磨剤を使用するとよいでしょう。
さいごに
むし歯は生活習慣病だといわれています。これまで、ご自身やご家族のむし歯の治療経験が多い方はむし歯ができやすい生活習慣になっていると思われますので、そのような生活習慣を改善するよう心掛けてもらえたらと思います。また、個人の努力だけではむし歯を防ぐことは難しいので、かかりつけ歯科医院を持ち定期的に受診することもお勧めします。さらに、薩摩川内市では全県下に先駆けて公立小中学校でフッ化物洗口を行ってきており、その効果も現れつつあります。個人の努力(自助)と地域の支えあい(共助)、公の支援(公助)がうまく連携して子どもたちの歯と口の健康を育んでいくために一緒に取り組んでいきましょう。
今回ご寄稿いただいた先生のご紹介
お口の健康を入り口に、子どもたちの心身の成長をのためご尽力いただいています。
[mashup query="current" hideEmpty="true"]薩摩川内市子育て世代包括支援センターなないろ相談室
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