古いものをたずね求めて新しい事柄を知るという、『温故知新(おんこちしん)』という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は薩摩川内市の産科医療を他の医療機関の先生方とともに支えてくださっている、医療法人聖壽会 田島産婦人科 院長の田島政人先生に『恩古知進(おんこちしん)』をテーマにお話しいただきました。
母なる大地
母なる大地といえばよく耳にするフレーズであり、一般的にお母さんの憂いを込めたやさしい眼、ふっくらしたお顔の微笑み、おおらかな暖かい懐の内を想像させられます、赤ちゃんにとって究極の理想郷です。
一方、大地といえば雄大で穏やかなユートピアの世界を連想させる半面、現実には、気候変動・天変地異などさまざまな事変があり、人間は科学の発達とともにその変化に対応して予測・予防・対策を考えて来ました。もちろん解決できるわけではありませんが少しずつ前進しています。
また、妊娠は病気ではないとの考えもあります。
日々妊婦さん方と接している中で、妊娠はやっぱり大地の出来事と同じだなと考えさせられます。つまりさまざまな変化(合併症)が起こります。
妊娠中に起こりうるさまざまな変化(合併症)
まず、初期の流産率は、約15~20%ともいわれ、現在の医学の力ではどうすることもできません。さらに、胎児が発育していく中でさまざまな異常が見つかることがあり、スクリーニング検査で治療の必要性などを検討し、胎内治療などがなされることもあります。またお母さんにおいても、妊婦健診で健康状態をチェックしますが、必要に応じて高次施設の産科・新生児内科の先生方はもちろんの事、他科の専門医の先生方の御判断・治療を仰ぐことになる場合も多々ありますし、特に最近では、心の病も増え、精神科の先生に大変お世話になっています。さらに行政も、さまざまな形で子育て支援事業に関わっていただき、社会全体で妊婦さんを見守っている現状です。
妊娠合併症で主なものとして、妊娠中にだけ見られたりする疾病(妊娠糖尿病・甲状腺疾患の一部など)、徐々にまたは急に発症したりする妊娠高血圧症候群などがあり、中には分単位の緊急性を必要とする病気(常位胎盤早期剥離など)、さまざまな病態(異変)が発生する時もありますが、お腹の赤ちゃんは何事が起ったのか理解できず、ただ大地(お母さん)の静けさ(治療)を待つだけですが、時には未熟児の状態で早々と管理されなければならないこともあります(必ずしも妊婦さんの責任だけではありませんが)。
妊婦さんにとって大事な『恩古知進(おんこちしん)』とは
日常診療の内で何も起こらなければいいなと思いつつも、発症した場合、今までの既往歴がかなり参考になりえます。ご本人だけではなく、ご兄弟・ご両親・祖父母、できればさらにその先代の方々のご病気も確認し、予測・予防・治療の参考にして頂きたいと思っています。(原点は食事・生活習慣のようですが)こうやって観ていきますと、まさに妊娠は大地と同じようなもので、時によっては牙をむく状況に陥ることもあるため、ご自身をよく理解するために古き(ご先祖)に恩恵を頂き、新しき(医学の進歩)を知って出来る限りの予防・治療を考える恩古知進が妊婦さんにとってはより大切な事であり、さらに、周りからもより多くの人に歓迎・愛され・見守られる次世代の子どもさんを育てて頂ければと考えています。
先生のご紹介:田島産婦人科 田島政人先生
医療法人聖壽会 田島産婦人科 院長
薩摩川内市の産科医療に熱い想いをもって携わってくださっています。
[mashup query="current" hideEmpty="true"]
薩摩川内市子育て世代包括支援センターなないろ相談室
〒895-0012 鹿児島県薩摩川内市平佐1丁目18〔薩摩川内市川内駅コンベンションセンター (SSプラザせんだい)内〕
0996-22-3611 / 0996-22-8038